〈3〉凍える姫、眠れる龍

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なんと、以前カイの一家が住んでいた家が目の前にあるではないか。カイのママが丹精込めていたイングリッシュガーデンは、今では芝生になって小さな子どもの遊具が置いてある。 「カイがね、アメリカに渡る前に、この家に住んでたの。懐かしい~。毎日一緒に遊んでたけど、カイが家に遊びに来てくれる方が多かったの。意外と遠かったんだなあ…小さな子の足じゃちょっと大変だったんだよね。だから」 「……」 「あ、ミモザの樹にブランコ。カイのパパも同んなじの作って遊ばせてくれたっけ」 「……」 あたしの記憶は、そこで途切れている。 数オリに何か声をかけられたようにも思うけど…はっきりとは覚えていない。 とにかくあたしは今、身体が動かせないまま、真っ暗で冷たくてどこだかわからない場所に閉じ込められている。 時折、誰かが誰かと話しているような声が聴こえる。それに、機械音。 (この声…どこかで…)
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