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「森村総合病院の産婦人科。もう一つの悲劇は失踪事件が起きる3ヶ月前の、真夏のある日に始まった」
カイは、紅森や緋色と一緒にワゴン型の捜査車両の中で、パソコンに向けて語り続けていた。
「その日はお産が何件も集中した上、駆け込みの急患が運ばれたおかげで、まるで戦場のような有り様だった。しかも全てのお産が終わって落ち着いてみると、駆け込み出産の患者が生まれたばかりの赤ちゃんと共に姿を消していた…女性の名前は偽名で、母子はそのまま行方不明。
父親や身内が訪ねて来ることもなく、病院関係者がいくら心配してもどうしようもなかった。しかし、悲劇はまだ隠れていた。佐々木夫妻の子と行方不明の女性の子が、不馴れな準看護師のミスで取り違えられていたんだ。先に気づいたのは姿を消した女性の方…山口里緒菜だ」
「立花里緒菜が出産!?」
「皆川の子か?」
カイの両脇で、捜索作業を続けていた緋色と舞玖が驚いて聞き返した。
カイは首を横に振り、唇に手を当てた。
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