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「場所の特定に手間取ってるんじゃないか」
「ダミーになってる教団関係の施設から片っ端から当たるべきだよ。公安で泳がせている信者や団体があって、それで揉めてるんじゃないのかな…組織っていうのは、いつもそうだ」
緋色が苛立ちを滲ませた。
「君、だんだん紅森刑事に似てきたね」
緋色のスマホが鳴った。
「紅森さんからだ。昨日、聖帝永和大付属病院の職員を名乗る人物宛にプリザーブドフラワーが大量に納品されている。シンポジウム用、とのことだが職員名ともども架空のものだった。これから病院と大学施設を捜索するそうだ」
「大学か。確かに成田有理に所縁(ゆかり)はあるが。こいつが成田にこだわる理由がわからないな。それに、やみくもに探すったって広いぞ?理工学系の施設かもしれないし」
「我々はどうします?応援に向かいますか?」
「いや。舞玖の言った病院に向かおうと思う。カイは?」
「僕はここで降りる」
「おい、一人でか!?」
パソコンを片手に、カイは車を降りた。
「大丈夫。これは僕の戦いだ。緋色、早く偉くなってよ。…日本に来てわかったことの一つ。君がいる『組織』ってやつは、僕にはきっと耐えられないだろう」
車が走り去ると、カイは手ぶらで目の前の建物に向かって行った……
もう一つのアパート。闇に黒くうずくまる「臥龍荘」に。
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