〈5〉バッドエンド白雪姫

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寒い… なにより、息苦しい。 冷たい闇の中で、なるべく意識をしっかりと持っていようと思ったけれど、あたしはどうやら夢と現実の境を行ったり来たりしていただけのようだ。 現実、といっても、この悪夢のような暗闇と密室のガラスケース、監視カメラの赤いランプ、自由にならない身体…絶望的なそれがすべてなのだけど。 どのくらい時間が経ったのかわからないが、あたしに使われたらしい麻酔?だか睡眠薬?だかがたぶん、切れてきた。身体は動かないし口は利けないけど、触覚とか…、そういうのは少し戻ってきた気がする。 あたしはガラスケースの中で、黒い羽布団に寝かされていた。光沢があって薄く、軽い。服装は襲われた時のままだが、細いコードが何本か体に付けられている。 (…心電計?) そして、布団の周りにはやはり白い花が隙間なく敷き詰められている。普段、日常生活の中で見たら美しい!と感動できると思うのだけど。今はただ、生気がなく不気味で、あたしに僅かに残ったエネルギーまで少しずつ奪い去り、自分達に同化させようとしているかのようだ。 花花の間から、白い冷気が立ちのぼり、暗闇の中で死の霧となる。
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