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暗闇の中に微かな機械音、ディスプレイの白っぽい薄明かり。…聞き覚えのある誰かの声が遠くで単調に話し続けている。でも、あたしにではない。
もっと、ずっと遠くの方で…カイがあたしを呼んで、叫び続けているような気がしていた。
突然。
暗闇の中に、大きな破壊音と男二人の叫び声、それから体と体がぶつかり合い床に倒れる、重く痛々しい音。金属音、落下音。
「痛たたっ!こいつ、人の頭の上に落ちて来るなんて何のつもりだ!!一体どこから入って来た!」
「頭のことならお互い様だ!窓や床を細工するなら、天井も塞ぐべきだったな」
…カイ!
カイの声だ!カイが来てくれた!
「雨樋とベランダを伝って天井裏の通風口を破壊して…って、要するに力業?親父さんの安普請に今は感謝だな」
「そのダンベル一本でか!?バカだろ!お前、頭いいくせにムチャクチャな奴だな」
「…愛莉っ!」
あたしに気づいたカイがガラスケースに駆けよってくる。しかし、今度は後ろから体当たりされ、二人が床に倒れこむ鈍い音がした。
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