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頷くとまたニヤリと笑い腕をどける。 俺は女が好きだからな……と言われたが、僕だって男より女の方がいい。 ただ興味を持てないだけだ。 漸く解放され桐生の後を追う。 途中で待っていた桐生は、クスクス笑いながら僕を見た。 「櫻田さんは男色なのですか?」 「…そんなわけないだろ。ああでも言わないと離してくれそうになかったからな」 「失礼しました。あの方は黒田さんと言いまして、私の護衛をしてくれているんです」 なるほどね。 桐生に近寄る男を近くで見ているから先に牽制したわけか。 「その護衛をつけないで、なんで1人で橋にいたんだ?」 「それはこれからお話します。まずは私の祖母に会っていただきたいのです」 そう言って先を歩き出した。 広い屋敷の廊下を歩いていると、見事に手入れされた庭が目に入る。 あの庭をあの強面が手入れしているのかと思うと、人は見かけじゃないんだなと少し興味を持つ。 変な所に興味を持って歩いていると、一つの部屋の前で止まった。 障子戸の前に正座し頭を下げる桐生の隣に、同じく正座して座る。 「美月です。只今戻りました」 「お入りなさい」 上品で優しい声に、なぜか安堵する。 失礼します…と言って中にはいる桐生の後に続くと、少し大き目な机が目に入り、そこには声に違わない上品で優しそうな老女が座っていた。 「待っていましたよ。さ、お座りなさい」 そう言われ桐生と共に正面に座る。 白い髪を纏めて結い上げ、綺麗な着物を着て背筋を伸ばし、しっかりと前を見据える桐生の祖母に威圧感すら感じた。 「美月の祖母、桐生琴と申します」 「櫻田恭平です」 優しく微笑まれ、丁寧に頭を下げられる。 挨拶が終わると、玄関で会った黒田という男がお茶を持って入ってきた。 僕達の前にお茶を置いて退室すると、桐生が話を始めた。 「橋の上の悪霊、退治するに至りませんでした」 「まあまあ、貴女が失敗ですか?」 「いいえ、こちらの櫻田さんのお力により退散したようです」 桐生がそう説明すると、桐生の祖母は僕に目を向ける。 何か言われる前にとなぜか口が開いてしまった。 「邪魔するつもりはありませんでした。僕にも分からない力というのが働いたようで……」
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