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いい訳じみてるが、事実だから仕方ない。
すると桐生の祖母…琴さんが口元を押さえ楽しげに笑った。
ポカンとする僕の隣で、桐生が溜め息を吐く。
「お祖母様、視ていらしたのでしょう?」
見ていた?
あの時近くにいたのか?
「お祖母様は霊視をしていたのです。あの時何があったのか、全てご存知なんですよ」
分からないという顔をする僕に、桐生が説明をしてくれる。
「そうですね……長く説明してもすぐには理解できないでしょうから、簡単に説明しますね。霊視とは、肉体をそのまま残し、意識だけを飛ばし離れた場所を見たり聞いたりすることができます」
なるほど……見るではなく視るか。
そんな事ができるなんて、どういう家なんだここは。
表の看板は飾りなのか?
「飾りではありませんのよ。私の義理の息子、美月の父親は極道の組長さんなんですの」
にっこりと笑いながら説明する琴さんにギョッとする。
僕の考えている事が筒抜けみたいだな。
「大抵の事は分かってしまいます。ですから私に隠し事はできませんよ」
「隠し事は……しない事にします」
にこやかにしているのに、その姿を見ても冷や汗が半端ない……。
「お祖母様、悪戯がすぎます。櫻田さんを威嚇しないでください」
「まあ、威嚇だなんて。少し見極めようとしただけよ」
……威嚇されてたのか。
並大抵の事じゃ動じないと自負してたんだが。
「視ていたのなら知っての通りです。櫻田さんのお力について教えてはいただけないでしょうか?」
桐生の言葉に琴さんの顔つきがスッと変わり、こちらも自然と姿勢がよくなる。
「本来なら恭平君の祖父、雪也(ゆきなり)から聞かされるはずだったものです」
「祖父をご存知なんですか?」
「ええ。、私と雪也は古くからの友でしたから。貴方にも会ったことがあるんですよ。雪也のお葬式で……覚えてはいないかしら?」
「……子供の頃の記憶が一部抜けているんです。特に祖父に関する事はほとんど覚えていません」
じーちゃんの姿や声なんかは思い出せるが、それ以外の記憶が一切ない。
いつからそうだったのかすらも思い出せない……。
一瞬寂しげな顔を見せた琴さんだったが、すぐに真面目な表情に戻し僕を見た。
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