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沈黙は肯定と同じだ・・・。 「僕の意思はないのか?」 「言おう言おうと思ってたんだけどな・・・。俺にもメンツってもんがあるし!」 何がメンツだ。 どうせ女にいいとこ見せたかっただけだろ。 「はぁ・・・いいよ分かったよ。 その代わり、僕の隣は男にしてくれ。女は近づけるな」 「ありがとう親友!マジで助かった!!」 こんな無愛想な僕と、長く付き合ってくれて感謝してるのもある。 しょうがないからそのメンツ立ててやるよ。 「明後日の日曜日にいつもの居酒屋集合な!」 「・・・分かった」 「んじゃ、日曜にな!」 日曜日か・・・折角の休日がもったいない。 だけど雄介にはいろいろ助けられているのは事実。 僕がこうして普通に生活していられるのは、雄介のおかげだ。 人はなぜ少数派の人間を受け入れられないんだろう。 少し違うところがあっても、人間は人間なわけで、普通に飯を食って寝て遊ぶ。 なんら変わりないはずなのに。 僕はその少数派の人間。 普通の人には見えないモノが見える。 そいつらは動かずにただそこに居るだけだったり、誰かにくっついてたり、または・・・ 「っ!!?」 怒りとも悲しみとも言えない何かをぶつけてきたり。 だけど何もしてやれないから気づかないフリをする。 そんな風に僕を見ていても何も出来ない・・・だからただ通り過ぎるだけ。 アパートの敷地内に入り、後ろを振り返る。 人じゃないモノから視線が消えたから出来ること。 何もないと確認して部屋に入る。 外で人じゃないモノに見られたり、時には追いかけられたりするけど、なぜかこの部屋までは絶対に入ってこない。 僕にしたら、言わば聖域のような安心できる場所だ。 部屋に入るなりベッドに横になる。 夕日が部屋を赤く染める。こういうの嫌いじゃない。 それが気持ちよくて・・・まだ全然眠くなる時間じゃないのに・・・なんだか眠くて・・・・・・。
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