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考えても分からない違和感を抱えたまま時間は過ぎ、日曜日になっていた。 なんかもう・・・本当に憂鬱だ。 仮病使って引きこもっていたいけど、雄介を裏切る事はできない。 「マジで嫌だ・・・」 声に出して呟いてみても何の効果もなく、重い足取りは確実に居酒屋へと向かっていた。 居酒屋に着いたものの、入る気になれず立ち往生。 扉に手をかけては引っ込めての繰り返し。 何度か繰り返し深く溜め息をついて覚悟を決めた瞬間、勢いよく扉が開き一歩下がってしまった。 「あっ!恭平!!」 店から出てきたのは雄介で、何回も電話したが繋がらないので迎えに行くところだったとか。 携帯を見れば数十件の着信と、時間も大幅に過ぎていて大遅刻だった。 「早く入れよ。遅いからもう始めちまったぞ」 「それは一向に構わない」 「お前の隣は俺と俺の友達だから安心しとけ」 その言葉にホッとしつつも、やはり気分は乗らない。 案内されるまま席に着くと、既に出来上がってるのが数人いた。 ペース早すぎ・・・。 遅れた事を詫びて自己紹介をし、ビールを注文し席に着くと、予想通り女共からの質問責め。 適当に返事をしながら料理に箸をつけていく。 隣に座っている雄介の友人は絶対動くなと言われているみたいで、僕の隣から席の遠い女に話しかけている。 申し訳なく思うが、本当に助かった。 だが雄介は幹事だからか、立ったり座ったりを繰り返していた。 席を離れる度に女が隣に座るから、ウザいったらない。 「恭平君のブレスレット綺麗だよねぇ」 「・・・どうも」 いつの間にか雄介の代わりに女が隣に座り、右腕についているブレスレットを褒めてきた。 いつからつけているのか分からないこのブレスレット。 シルバーの太いチェーンに、青・赤・黄・緑・無色の5つの玉が連なっている。 金具もなく若干の余裕はあるものの、手を通るほどの隙間はなくどうやっても外せない。 切って外そうとしたこともあったけど、何で出来ているのか傷一つつかない。 「どうした、ボーっとして?」 声をかけられブレスレットから目を向けると、いつの間にか雄介が隣に戻ってきていた。
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