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答える事ができる……桐生のその言葉が本当か分からなかった。 でも不思議な事がおきたのは事実で、僕はその答えを知らないといけない気がする。 それに知ることで人ではないモノを遠ざけられるなら、それは是非とも知っておきたい。 「行くよ…」 「よかった。では参りましょうか。あの悪霊も櫻田さんのお力で逃げてしまいましたしね」 振り向くとあの女の霊はいなくなっていた。 退治したんじゃくて逃げた……。 消し飛んでくれてよかったのに。 桐生に続いて橋を渡りきり、暫く歩くと立派な日本家屋が見えてきた。 「あそこが私の家です」 なんとも立派な家だ。 それよりも僕の目についたのは、家と変わらず立派で堂々と門に飾られた達筆に書かれた木の看板……。 「……桐生組?」 まさかと思いたいが、玄関を開けた桐生に続き中に入ると、僕の予想は見事に的中した。 「おかえりなさいやし!お嬢!」 「只今帰りました。いつもお出迎えありがとうございます」 桐生がにこやかに話しているのは、どう見ても堅気じゃない人。 話し方や立ち振る舞いからお嬢だとは思ったけど、まさかこっちのお嬢だとは……。 「お嬢、後ろの男は?」 堅気には見えない男が、鋭い視線を僕に向ける。 そんな視線に怯むわけじゃないが、面白くはない。 「私のお客です。お祖母様の所へ案内しますので、お茶をお願いします」 「はぁ、かしこまりやした」 桐生はニコリと笑い靴を脱いで揃え、廊下へと上がる。 おじゃまします…と後に続こうとすると、肩を捕まれた。 「……なんですか?」 「お嬢の客かなんか知らねえが、手ぇ出すんじゃねえぞ」 耳元でそう凄まれるが、勘違いも甚だしい。 「僕も彼女もお互いにそういう感情はありませんから」 そう言って手を払うと、今度はその手を捕まれた。 力が強く地味に痛い。 「最初は誰でもそう言うんだがよ、最後には必ず付き纏うようになる」 「……女に興味ないんで」 そう言うと目を丸くした後、ニヤリと笑って肩を組んできた。 「なんだお前、男色かよ」 「………………」 そんなわけないだろ。 でも肯定して絡まれないなら別に勘違いされても構わないな。
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