4人が本棚に入れています
本棚に追加
000/
最初は手の込んだ悪戯の類だと思った。しかし目を通していくうちに、そんなことは不可能だということに気づかされた。
その手の嫌がらせを好んで行う連中に心当たりはあったが、彼女たちにこんな高度な技術があるとは思えなかったからだ。
でもそれならこれはいったい何なのだろう?
彼女たちの仕業でないのならこの悪趣味なスレッドは誰が立てたのだろうか。
◇ ◆ ◇ ◆
「……五十音市高2女子殺人事件」
御代澪は確かめるようにパソコンのモニターに向かってそう呟いた。
ほんの気まぐれで自分の名前をインターネットで調べてみたところ、とあるネット掲示板のスレッドが引っかかったのだ。
思わずマウスを握っていた手が止まったのは、偶然にもその町に澪も住んでいたからである。
五十音市は都心まで鈍行列車でおよそ2時間の距離にある寂れた地方都市だ。
かつては交通の要衝として栄えた宿場町だったが、今ではその面影はどこにも残っていなかった。
澪が五十音市に引っ越してきたのは小学校5年生の冬休みのときで、都会育ちの澪にはこの町に沈殿した閉塞的な空気がどうしても受け入れられなかった。
それは6年が経った今も変わらない。それでも五十音市に馴染みたいと思っていたし、そうしなければならないという強迫観念にも似た強い感情を持ち始めていた澪には、この町で起こったという事件が気になったのだ。
そのページをクリックすると事件の概要が貼られていた。
御代澪と検索してこのスレッドが引っかかったのだから始めからそんな予感はあったのだが、自分と同じ名前の人間が、しかも同じ町で殺されたその事件のあらましに目を通すという作業は、やはりあまり気分のいいモノではなかった。
しかしながら最後まで読み切ったのは、不快感を好奇心が上回ったからだ。
もちろんその好奇心の中には怖いモノ見たさも含まれていたのだが、読み終えたあとに澪は自分の安直な決断を激しく後悔した。
残忍な犯行だったから――というのも理由の一つではあったが、何よりも殺害された御代澪と自分の境遇が不気味なほどに似ていたのだ。
まるで自分が殺された記事を読んでいる気分にさせられた。
最初のコメントを投稿しよう!