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思考がまるで走馬灯のように目の前を流れた。
冷静になって思惟すればなんてことのない結論に辿り着けるのかもしれない。
今の自分が動揺しているということは明らかだ。間をおいて例えばそう、父に助言を求めるのがいいだろう。
しかし澪は頭を横に振った。間をおけるはずなんてなかったからだ。
もしかしたら自分が一週間後に――いや、殺害されるのは五日後か。とにかく近々、惨たらしい暴力を受けた末に、生きたまま腹部を引き裂かれることを想像するととてもじゃないが、後回しになんてできなかった。
未来を指すスレッドや同姓同名だということが、ただの偶然だと思えないほどに、澪の学校生活はどうしようもなく行き詰まっていた。
パソコンのスピーカーが甲高い電子音を響かせたのは、自分の最期が脳裏をよぎった瞬間だった。
その電子音に意識を引き戻されて、自分のブラウスが冷や汗で冷たくなっていることに気がついた。
電子音はメールが届いたことを報せるモノだった。
澪はいやに冷えた指を動かして、メールのアイコンをクリックする。
自分はいったい何に巻き込まれてしまったのだろう。
そのメールの本文を読んだ澪は、アイスクリーム頭痛のようにキン、と痛む眉間を指の腹で強く押した。
迷惑メールの類だとは思えなかった。なぜならそのメールは澪が殺されることを予知しているかのようであったからだ。
いや……送り主が犯人なのかもしれない。頭の端にはそんな思考もあったが、すがるように、導かれるように、澪はそのメールに返信をしていた。
そのメールは至極簡潔な文章でこう綴られていた。
――決して壊れることのない躰、欲しくはないかい?
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