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「そうかもしれない。どの家の人間が操縦士になるかでなく、本土を防衛して闘いに勝利することのほうがより重要なのは確か。でも、カザン兄さんがいうには須佐乃男で氾(はん)エウロペ連盟軍に勝利すれば、操縦者は国民的な英雄になれるんだって。たった一回の勝利で軍神になり、若き将軍の地位も見えてくる。主操縦者は今後数十年に渡り進駐軍のなかで決定的な影響力を振るえるはずだ。人事や予算を左右できる」  そうなれば100万人を超える進駐軍の人事を自由に差配し、日乃元の国家予算の3割にあたる軍事費を自由につかえるのだ。想像もできなほどの権力を手にすることになるはずだ。逆にいえば、もしここで東園寺家と五王重工が勝利を手にすれば、この連携による進駐軍支配は鉄壁のものとなる。  タツオは腕を組んで考えこんだ。五王重工の日乃元支配は現在の段階でも目に余るものがある。軍トップの人事にまで介入し、軍規違反により逆島(さかしま)家を近衛(このえ)四家から降格させたのも、陰で五王が糸を引いていたという噂(うわさ)だ。五王の専横をこれ以上許すわけにはいかない。
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