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 サイコがうつむいていった。 「お兄ちゃんはいってた。もし、自分になにかあったら、そのときはわたしが正操縦者になれって。副操縦者として、タツオとジョージをうまく使え。あのふたりがおれとおまえ以外では、最も須佐乃男への適合率が高く、戦略眼も優れている。やつらには才能がある。お兄ちゃんは今でもタツオのこと、誰よりも高く評価しているんだよ」  タツオは息を吸って深呼吸した。その幼馴染(おさななじ)みと命のやりとりをするのだ。進駐軍作戦部に選ばれる最強の毒虫となるために。決戦兵器には数千億円どころか兆円単位の戦費が投入されていることだろう。いくら操縦者候補とはいえ、運の悪い者、目前の些細(ささい)な闘いを切り抜けられない弱者など、いくら切り捨てても痛くもかゆくもないのだろう。軍の組織は冷血だった。
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