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「徳丸よ、貴様亡き後も、吾輩は鶏姦法消滅に尽力しよう。そして十年以内に実現させる」
吹くのは、夜風。
この冷たさから察するに、もし明日も雨雲がかかれば、降るのは雪となるだろう。
しかし雪が降る頃、この男はもうこの世にいない。
「吾輩が貴様に言うべき台詞はこれだけだ。貴様も言い残したことがあれば言うが良い」
「…………」
淑女ラーメンが月明かりを浴び、闇夜に浮かび上がる。
貴婦人を髣髴とさせるその御姿は、例えようもなく美しい。
そして、地に刺さる3Dおじいちゃん。
淑女ラーメンと幾百打ち合ったその刀は、地から徳丸の血を吸い上げ、帯びていた。
「……一世紀先ともならば、もう刀など存在しない。ならば拙者のような者は、どのようにして愛を確かめるのでしょう」
「刀もピストルも必要ない。その頃には著名人にも貴様のような者が複数いて、それが当たり前にあるであろう」
「また生を受けるならば、そのような時代に生まれたいものです」
「女を好かずともよいのか?」
「ええ、もちろん」
愛は確かめた。
そして、叶わなかった。
しかし、これで良い。
愛する人に自分の存在を知ってもらえたならば、それだけで。
「杉方さん、来世でまた会いとうございます」
「ああ。貴様に月あらば」
「はい。その暁には、刀など……淑女ラーメンと3Dおじいちゃんなど通さずに、直接」
「……ああ、必ずや。
では、御免」
杉方は、淑女ラーメンを振り下ろした。
完。
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