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マイザーはいつも通りに仕事に行った。まるで昨日のことが何事もなかったかのように。
玄関のドアが閉まる音を聞くと同時にヴィタの青い瞳から涙が落ちた。
ヴィタは思った。
”あれだけ言ってもマイザーには響いていない”と。
ヴィタはつぶやいた。
「もう無理だわ」
ヴィタは自分の使っていたグラスを綺麗に洗って寝室に戻る。
床に自分の荷物がぐちゃぐちゃに目一杯詰まったかばんが転がっている。
ヴィタはそれとは別にもう1つ大きなかばんをクローゼットから引っ張り出した。
それを持ってリビングルームに移動した。次はリビングにある自分の荷物を詰めるために。
黄色いマグカップに星のピアス。天上から吊るしていたキラキラ光るオーナメントも外して詰めた。
1つ荷物を詰めるたびにヴィタの瞳からは涙が零れ落ちた。
3年分の荷物はなかなか多い。
付き合った日にマイザーにもらった宇宙クラゲのぬいぐるみは少し考えてからそっと元あった棚に戻した。
最後に自分の指にぴったりとはまっていた金色のリングを外してテーブルにそっと置いた。
荷造りを終えたヴィタは椅子の上で足を抱えて座った。
ヴィタの目の前のテーブルの上には自分のハンディフォン。
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