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ヴィタは涙を流しながら言った。
「昔とあなたは変わったわ。会話をしなくなった。いつもご飯を食べる時は宇宙テレビを見てるばかり。話なんてしてくれない。私の話も聞かない」
マイザーは言った。
「聞いてるじゃないか! さっきの君の話も聞いてたよ。隣の宇宙ハウスが改装工事してるって話だろ? それで昼間に菓子折り持ってきたんだろ? ほら。合ってるだろう?」
ヴィタは金色の細い眉をひそめて言った。
「クイズをしてるんじゃないのよ? あなたは聞いてたんじゃない。聞き流してたのよ。目線はテレビ。笑うタイミングもテレビ。私の話にはふんふん適当に頷いてただけだった。どうして火星人は金星人の話を聞かないの?」
マイザーはうんざりしたように言った。
「テレビくらい見させてくれよ! 仕事から帰ってきて疲れてるんだ! 君の話も聞いてるよ! 今もテレビなんて見てないだろう」
ヴィタの眉間のシワが深くなる。
「それは私が消したからよ。ついてたら見てるに決まってるわ。もうあなたにとって私なんてどうでもいい存在なんだわ。空気と同じ。でも私は空気じゃない。もう耐えれない」
マイザーはまたうんざりとした顔をした。そんなマイザーを見ながらヴィタは思った。
初めてデートに行った時のマイザーはこんなんじゃなかった、と。
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