夜食は私じゃダメですか

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先生は、独身で浮いた話もこれといってないようだ。 なのでてっきり、性的嗜好が特殊なのか女性そのものが対象外なのかと思っていた。 先生の若い頃の作品には、歳上の女性がよく登場する。 慈愛に満ちてゆるゆると甘やかしてくれそうな。 主人公の青年はその胸で、のびのびと心情を告白して、 常識ではあり得ないほどグダグダになった関係にズブズブとはまりこんでいく。 その日常にぽっかりと空いた穴に誘われるように快楽を忘れられず、主人公は何度も人に言えない行為に溺れる。 「この辺りの執着が、すごくリアルだからやっぱり歳上の女性が好きなのかな……」 カップ麺の蓋にしていた文庫本の、すっかりクセのついてしまったページ。 童貞を捨てるシーン。 若い女性との行為で暴発して落ち込む主人公を癒し、『たち直らせて』慰めてくれた親戚のお姉さん。 蕩けるようなそのシーンはファンにも人気がある。 若い日の先生を思い出して、もう一度頑張ろうと思った。 来週は、お湯を入れてからの時間を変えてみよう。 たかだかカップ麺に上手や下手があるなんて思ってもみなかった。それでも先生の好みの一杯を作るために練習をしている。
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