Lost Christmas

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錦戸の論文の中で最も平松の興味を惹いた物が『生物特殊第二進化論』であった。 過去における生物の最大の進化はミトコンドリアを体内に取り込んだ事であるが、ある条件下において特殊なウイルスを体内に取り込む事で、生物は突然に今の我々には想像もつかない更なる進化を遂げるとするものであった。 まるでSFの世界の話のようにも聞こえるが、確かにそれまで持っていなかったミトコンドリアを体内に取り込む事によって生物は進化したのだ。 平松は生物学者ではないために細かい所にまでは理解が及ばなかったが、そんな突然の進化が訪れる日が来てもおかしくはないのではないかと思う。 もちろん、錦戸を異端視する声も上がったが、生物学界においての多大なる錦戸の功績がそれらの声を押さえ込んでいた。 考古学とは人類の歴史を調べる事であり、平松は考古学の中でも先史時代(石器時代・青銅器時代・鉄器時代)を専門としていたが、石器時代ともなると現在に遺された情報は極めて少なく、生物学の視点からも観る必要があると平松は考えている。 当時に存在した生物や、その生物の棲息地域や行動を無視しては、大局の正しい道筋を探し出す事は不可能だ。
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