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有り得ない。
こんな物がこの世界に存在するなど、決してあってはならない。
平松の脳は活動を停止し、目にした物を真っ向から否定する。
遺跡とは過去に人々が生活をしていた痕跡であり、現代の我々の生活へといずれは繋がっていく。
化石とて、実際に過去に存在した動物達の亡骸だ。
だが、これは……と、平松の脳は活動を停止したまま、ゆっくりと周りに目をやる。
空間の広さは40メートル四方はあるだろうか。
十人ほどの人々が重機を動かしたり座り込んだりして、『それ』の周りで黙々と作業をしている。
平松には、その者達がなぜ平然と作業をしているのかが理解できない。
重機で土を掘り起こし、ハケを使って『それ』に付いた土を取り除いている。
一人は傍に置かれた電子顕微鏡の操作をしていた。
「な……なんだこれは……?」
ようやく平松の口から言葉が発せられた。
「私もこれを初めて見た時は全く同じ反応でしたよ」
錦戸は笑ってそう答えたが、錦戸の声など平松の耳は僅かにも届いてはいない。
そもそも、平松の言葉は誰かに向けて発せられたものではなく、無意識の内に溢れ出たものなのだ。
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