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「もう一人?」
「直ぐに来るはずだ。座って待っていろ」
月島はそう言ったきり、無言になる。
「すぐってどれぐらいっすかね?」
ジンが聞き返したが月島からの返事はなく、仕方なく楕円形のデスクの椅子に腰掛けてデスクに足を投げ出した。
「まあ、どうせ暇だからいいっちゃいいんですけどね」
月島は一度視線をデスクの上に投げ出されたジンの足に向けたが、何も言わずにモニターに戻す。
「ちょっと、ここどんだけ広いのよ! 迷うじゃない!」
ドアの外から聞こえてきた騒々しい女の声にジンが振り返ると、丁度入り口のドアが開いて若い女が入ってきた。
金に近い茶髪に緩いパーマをかけ、ぱっちりした目が特徴的である。
女は部屋に入って来るなりジンを見つけ、その足を止めた。
驚いた表情で、少しふっくらとした形の良い唇を開く。
「ジン? なんでジンがこんな所にいるのよ?」
ジンも驚いて、思わず椅子から立ち上がった。
「るるか?」
女は枢木(くるるぎ)るるかといい、ジンと同じ児童施設、希望の園の出身者であった。
希望の園は様々な才能を持った孤児を集め、その才能を最大限に伸ばすための訓練を行なっている。
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