Lost Christmas

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―1999年12月24日、PM9:27 都内某所― 「平松教授、こちらです」 黄色いヘルメットを被った作業着の男が、物々しいエレベーターへと平松紀之を案内した。 作業着の男がボタンを押すと、エレベーターの扉はすぐに開き、作業着の男がどうぞと仕草で表す。 平松は「はあ……」と気のない返事をしながら自分の両脇に立つ二人の真っ黒なスーツの男達にチラリと視線をやり、スーツには不釣り合いな黄色いヘルメットを被った頭を軽く下げて作業着の男より先にエレベーターに乗り込んだ。 分厚い鉄の扉が閉まり、エレベーター特有の浮遊感がじわりと下半身からやってくる。 広い鉄製の箱の中には虫の羽音のような音が響いているだけで、四人の間に会話はない。 平松は扉の上にある階数の表示を見ているが、自分達の乗ったエレベーターが今どのあたりなのかサッパリ見当もつかなかった。 階数表示には、1FとBしか表示されていないのだ。 今は1FとBの間にある丸い点がオレンジ色に点灯しているが、それもずいぶん長い時間点灯したままであり、一向にBが点灯する様子はない。 そもそも、平松は今どのあたりにいるどころか、なぜ、ここにいるのかという事すら分かっていなかった。
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