950人が本棚に入れています
本棚に追加
/844ページ
どくん、とシートに背中を預けているジンの心臓がアナウンスに反応する。
手のひらが汗ばみ、座席の肘置きがぬるぬるとした感触に変わっていく。
コントロールルーム前面にある三枚の巨大モニターには、セーレの進行方向にある壁が開かれていく様子が映し出されていた。
「なに? ジンったら珍しく緊張しちゃってんの?」
隣の座席にいるるるかの声に、ジンが少し体を起こして視線を移す。
「お前も顔ひきつってんぞ」
ジンがひきつった笑いを浮かべて言い返すと、るるかは「ひきつってなんかないわよ」と頭をヘッドレスにピッタリとくっ付けたまま答えた。
『出動準備完了まで、残り、五秒。発進カウントダウンへ移行します』
ジンは自分の頭をヘッドレスに戻し、発進を待つ。
それまでの機械的なアナウンスから、女性スタッフの声に変わる。
「発進まで10秒、カウントダウンを始めます」
耳鳴りのようなセーレのエンジン音が、どんどん高くなっていく。
「発進まで、5」
「4」
「3」
「2」
「1」
次の瞬間、信じられない程の圧力がジンとるるかの全身をシートに押し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!