Lost Christmas

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高杉は振り返り、「ご想像通りですよ」と言って小さく笑った。 それを聞いた平松は背筋に薄ら寒いものを感じ、ごくりと唾を呑み込んだ。 高杉はハッキリと言ったわけではないが、それはつまり、マスコミが書き立てるような眉唾物の話が実際に存在したという事を肯定しているのと同じ事であった。 『皇居や国会議事堂の地下には、要人が隠れる為のシェルターがある』 そんな眉唾物の話が、今、自分の目の前に存在している。 正確に言えばシェルターではない。 シェルターもどこかに存在しているのかもしれないが、この鉄道は明らかに移動するための物であり、つまり、有事の際には政府要人はこの鉄道を使い、安全な場所まで移動できるようになっているのだろう。 今平松が乗っているトロッコではそれほど遠くまで行けそうもないが、もしかしたら、この地下鉄は北海道から沖縄までつながっているのかもしれない。 だが、もっと大変な場所へと平松は連れていかれようとしているのだ。 総理大臣がこのような場所に平松を呼んだという事は、この高杉総理大臣にとって、秘密の鉄道よりも重要な物がこの先にあるという事だ。 そうでなければ、政府要人ではない平松にここを見せる必要がない。 まだ見ぬ謎を想像し、平松は再び唾を呑み込む。
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