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平松の脳はすぐにその可能性を否定する。
平松は大学教授ではあるが専門は考古学であり、地質には詳しいが、地下を走る鉄道となると完全に専門外だ。
そんな物は鉄道の開発に詳しい者に見せれば済むはずであり、平松に見せた所で一般的な感想程度のものしか引き出せないのは誰にでも分かるはずである。
平松は、その疑問にろくな答えを導き出せないまま、ここまでの驚きが一瞬で吹き飛ぶほどの信じがたい真実を目の当たりにする事となった。
どこまでも続くかと思われた暗いトンネルの先に、小さく人工的な明かりが見え始めた。
「ようやく到着です」
高杉総理大臣は緊張した声色で目を細めてその明かりを見ると、トロッコのスピードを落とさせる。
テレビを通しては決して聞く事のない声色だ。
その高杉の声が平松にも緊張を伝染させる。
光が徐々に近付いてくると、やがてトンネルの左側の壁に向かって白く明るいライトがあてられ、何かを照らしている事が分かるようになった。
ライトに照らされた部分の壁が大きく崩れているように見える。
その崩れた壁の周りでは、十人ほどのヘルメットを被った者達が何か作業をしているようだった。
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