第1章

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「神間閻帳(しんまえんちょう)」これは、私が人の生というものを預かることになってから知った存在です。 この帳簿は、今から500年以上前の神と閻魔大王が秘密裏に作成したもの。 当時、日本国は戦国時代という争いの絶えない世界でした。無情にも命を奪われてしまった人々の魂はあちこちで彷徨っていました。どこに行けばいいのかどうしてここにいるのかも分からない魂ばかりで溢れ、天上界は混乱していたそうです。 この事態を重くみた神と閻魔大王はある一つの帳簿を作りました。 それが「神間閻帳」。神の帳や閻魔帳にも記されることのない迷える魂がひっそりと書き込まれるものです。 人はいつの頃からか神と閻魔大王という存在を対照的なものだという考えを持ち始めました。 生を預かる上では同じ立場であるにも関わらず、いい行いをすれば神の元、天国へ。悪い行いをすれば閻魔大王の元、地獄へ。 願い事をする際には神頼みをして神を崇めますが閻魔大王頼みというのは聞いたことがありませんね。そのため人は悪い行いをして地獄に落ちないようにしていたはずです。 しかし、近年の人というのは自分の私利私欲のためだけに人の命を奪ってしまう。そして自分は助かろうと懇願する。 なぜでしょう。 なぜそのような世界になったのでしょう? 世の中がよくなりすぎ、人が甘やかされてしまったためでしょうか? 大人に成りきれなかった子どもが大人になってしまったからでしょうか? 理由は…分かりません…。 世の中は悪い連鎖が生じてしまっていることは確かです。 今の世の中をどうしたものか………今宵もまた…
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