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ビクッ!
私の隣の彼が低く重みのある声でその魂に告げた。
彼の本当の姿を知っている私としては、ビクビクとしている魂を見ているのは楽しくもあり可哀そうでもある。
「緑深(りょくしん)。帳簿を持って来て下さい」
「お、おう」
そういうと彼は部屋の中の本棚にあるひと際青い本を手前に引っ張った、
と同時に隣の本棚がゆっくりと前に開いてきた。
自分が入れる十分な空間ができると彼はその中に消えていった。私はそれを見届けると、魂に向きなおった。
「それでは、基本的な質問をしますね。名前は?」
「たけし、です」
「たけし。私は、蓮水(れんすい)。人の魂を扱う者です。人間界では神と呼ばれているようですね」
「神…様」
「そうです」
たけしと名乗った魂は再度確認するように言葉をかみしめた。
人を包み込むような温かな声のトーン。
魂になる前の姿がどのような男性だったのかまでは分からないけれど、とても優しい人柄の青年だということは分かる。
「待たせたな!」
「ひっ!」
分厚い革張りの本を片手に大柄な彼が本棚の後ろから出てきた。
彼は胸板が厚く、よく鍛えられた両腕。
子ども3~4人は二の腕で軽々持ち上げることが出来るだろう。
かといって、筋肉質ではない。
背も高いためとてもバランスが取れている。
人間の世界でいえば……
スポーツマンタイプというのだろうか。
それに加えて低くよく響く声をしているから迫力がある。
いきなり声をかけられると魂はそれにびっくりしてしまって声をあげてしまうようです。
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