第1章

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「でも、そんな話、俺にしていいのか?」 「なぜだ?」 「だって、俺が別の人に話をしてしまったらみんなに分かってしまうだろ?」 「それは、心配ありません。あなたをどちらに送るにせよ、この記憶は消してしまいますから」 「そうそう、お前以外の奴がここに来たとしても同じことだ。だから、洩れる心配はない」 「知られてしまったら、どうなるの?」 「さぁ?それは、どうなるのでしょうね?」 「知らないの?」 「ああ。今までに知られてしまう事態に陥っていないからな」 「ただ、私が思うに魂の操作をするのではないかと考えられますよ。天上界の者は多くの魂を扱っていますからそれなりに眼は養われています。閻魔帳・神の帳に書かれないということはうまく利用すればそれぞれの階層を支配できるわけですから」 私は自分の考えを緑深とたけしに話した。 帳簿の魂は白黒つかない不安定な魂。 その魂にうまく話をすれば自分の思うように利用できると考える者もいるだろう。 そうでない者達であることを願うが、天界・地獄界それぞれの人も、もともとは人の魂であるためいつ暴走するか分からない。 暴走してしまったら私と緑深でも太刀打ち出来ない程の勢力になることは必至。それだけは避けたいものだ。 「蓮水もそう考えていたのか。俺もそうだ。だから、慎重に扱わなければならない魂なんだ」 「ふ~ん、そうか。だったら、消してもらえた方がいいな。利用されたくないし」 「たけし……」 それは、たけしの本心だと感じられた。きっと、人であったなら彼は今、まっすぐに私たちを見ているであろう。強いまなざしで。 「話が長くなったな。それじゃ、行くか」 「行くって?」 「お前の世界だよ」 そう言うと、私たちは青白い魂のたけしを連れて、入って来た扉のほうではなく壁に向かって歩き出した。 「ちょ、ちょっと!説明をしてくれ!」 「あっちに行ってからだ」 「・・・っていっても、目の前は壁です!」 「大丈夫ですよ」
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