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壁にぶつかると主張するたけしをよそに私は壁に掌をそっと当てると難なく壁を抜けた。
抜けた先の目の前は青い壁と白い模様。
そして足元にはたくさんのビルや家が立ち並んでいる。
ビクビクと震えているたけしに緑深が話す。
「おい。いつまで目ぇつぶっている?着いたぞ!」
「へっ?」
「あなたの世界ですよ」
「人間の世界だ」
そういわれたたけしは、多分だが恐る恐る目を開けたに違いない。
そしてキョロキョロと辺りを見渡していた。
緑深は、掌の魂をフワッと宙に投げた。私はあたりを見回すたけしを眺めていた。
隣にいた緑深は閻魔庁から持ってきた帳簿を開いてつぶやいた。
「なになに、トラックに飛び込んで自殺」
「へっ?誰が?」
「あなたですよ」
「えっ?おれ?」
「そうですよ」
私は静かに答える。
私たちの言葉にしばらく考え込んでいたたけしが慌てて答えた。
「俺が飛び込み自殺?まさか!だって俺歩いていただけだし」
「歩いていただけですか……」
「やっぱりか……」
私と緑深は本人が意図しないで亡くなったという確信を持ち経緯を確認しようとたけしに聞いた。
「どこに行くつもりだったんだ?」
「どこって……大学だけど?」
「そうですか…わかりました。では、少し調べてみましょう」
そういうと私は一つ大きく息を吐き目を閉じた。
周りの音が少しずつ消えていくそして時間がフィールドバックされていく。
たけしが天界に送られてくる前の時間までもどしてみた。
私は小さく息を吐き、たけしを眺めた。
緑深(りょくしん)が私に問いかけた。
「わかったのか?」
「ある程度は…」
「ある程度?」
私は彼の顔を眺め、にっこりとほほ笑んだ。
彼は私の考えが分かったようで、顔をひきつらせた。
「おいおい、またかき回すのか?」
「かき回すとは失礼ですね。真実を突き止めるんです」
「はぁ~」
緑深が大きくため息をつき、呆れてものが言えないとばかりに私を眺めている傍で、たけしが声をあげた。
「あっ!真由美、和美、凛子」
「はぁ?」
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