第6章

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     なんなのよ、もう……。 ふーっと溜め息を吐くと、まりこちゃんがスッと身体を寄せて耳打ちする。 「時間を持て余すけど、定時になったらすぐ会社を出た方がいいと思いますよ。 何かあったら、わたしが残業しますから」 「ありがと。でも、大丈夫だから」 よくよく考えたら、普通のデートをするだけだし。 旅行やコンサートみたいにチケットが絡むものでもない。 多少時間に遅れても、砂川さんなら笑って許してくれると思うんだけど。 「応援してますから」 「う、うん。ありがと」 そこまで言ってくれるなら、キリがいいところで仕事を終えて、あとはまりこちゃんにお願いしようかな。 「お先に失礼します」 課のみんなに聞こえるように挨拶をすると、更衣室に向かった。 手早く着替えて、ロッカーからバッグを取り出す。 着替えや化粧品が入ったバッグは、まるで小旅行にでも行くみたいだ。 今日、砂川さんの部屋にお泊りするんだよね。 いろいろ想像すると、なんとも言えない溜め息が出てしまう。
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