第1章

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  短大を出て社会人になっても、コウくんのわたしを見る目は相変わらずだ。 妹のまま。 そして、今ではそれに『部下』というおまけまでついてしまった。 「じゃ、行ってくる」 「行ってらっしゃい」 コウくんの背中を見送って、事務所に戻ろうと踵を返したときだった。 「優奈」 コウくんが、わたしの名前を呼んだ。 コウくんが会社でわたしの名前を呼び捨てにするのは珍しい。 「なに?」 ドキドキしながら振り向くと 「金曜、大丈夫だよな?」 そんな言葉が返ってきた。 「……うん。大丈夫」 「今回は期待してていいから」 自信満々にそんなことを言うコウくん。
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