見える彼女と見えない僕の小話

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少なくとも、人は一人では生きていけなかっただろう。共同体としての生活を送ることで自らの勢力を広げ、発展を遂げたのは歴史が示すところだ。 だからこそ、生きていくうえで協力して生活をしていくと言うことは、人間に定められた必然だったのではなかろうか。 「人間は、協力しなければ生きていけない生物だったからだよ。きっとね」 「ふーん。やっぱりよく分からない。どうして協力しなければ生きていけなかったくせに、相手が何を考えているか分かるようにしなかったの?」 「その答えがあったら、僕が聞きたいぐらいだよ」 「……それは、本心なの?」 「うん。聞けるなら聞きたい、僕の本心だよ」 「……やっぱり、にんげんって分かりにくい」 その後彼女はこちらに興味を示すこともなく、お腹の上に頭を乗せ、ひたすらフルーツを食べ進めていく。 不意に、僕のお腹の虫が鳴いてしまった。彼女の口元は緩んでいた。 「お腹は、私たちと一緒で分かりやすいね。ほら、食べなよ」 まだ残っていたフルーツを一つ、彼女は僕に手渡してくれた。一口含めば、瑞々しい甘さが身体を満たしていく。だが、そんな僕を怪訝な表情で見る彼女。 「美味しいの?」 「美味しいよ。とっても」 「……やっぱり、分かりにくい」 彼女の一言に、僕は苦笑することしかできないのであった。 Fin
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