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「ねぇ、どうしてにんげんって、そんなに分かりにくいの?」
口元にべったりと黄金色の果汁を付けながら、彼女は僕にそんなことを聞いてくる。
「そんなに、分かりにくいかな?」
「分かりにくい」
あまりの即答ぶりに、思わず笑みがこぼれる。
「ほら、どうしてそこで笑うの? 何も面白いことはなかったはずだよ?」
「いや、面白かったからだよ、さっきのやり取りが」
「やっぱり、分かりにくい。にんげんって」
新しいフルーツを手に取り、彼女は別のフルーツを食べ進めていく。その間、尻尾はクエスチョンマークを形作っていた。思わず僕は彼女に声をかける。
「何がそんなに疑問なの?」
「えっ……あ……」
唐突な質問に驚いた彼女は、持っていたフルーツを落としてしまっていた。ころりと転がったその周りを、黄色の粉が舞い踊る。
彼女は落としたフルーツからゆっくりと視線を上げ、僕の視線の先を追う。そこには、クエスチョンマークを形作っている彼女の尻尾があった。
「あ、そっか」
不意にこぼれたのだろう。視線が流れ、再び僕と彼女の視線が交錯する。彼女は一つ息を吐き、落ちたフルーツを拾って口元に添えたところで、意を決したように言葉を紡ぐ。
「どうして、にんげんって、そんなに分かりにくいのに生きていられたの?」
「どういうこと?」
シャクシャクと瑞々しい音を響かせつつ、一字一句漏らさないためか文字通り聞き耳を立てている彼女は、フルーツ越しに言葉を続ける。
「相手が何を考えているか分からないのに、どうして私たちみたいに協力したりして生きていくことができたの?」
分からないとしか、僕には言いようがなかった。
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