4人が本棚に入れています
本棚に追加
少なくとも、人は一人では生きていけなかっただろう。共同体としての生活を送ることで自らの勢力を広げ、発展を遂げたのは歴史が示すところだ。
だからこそ、生きていくうえで協力して生活をしていくと言うことは、人間に定められた必然だったのではなかろうか。
「人間は、協力しなければ生きていけない生物だったからだよ。きっとね」
「ふーん。やっぱりよく分からない。どうして協力しなければ生きていけなかったくせに、相手が何を考えているか分かるようにしなかったの?」
「その答えがあったら、僕が聞きたいぐらいだよ」
「……それは、本心なの?」
「うん。聞けるなら聞きたい、僕の本心だよ」
「……やっぱり、にんげんって分かりにくい」
その後彼女はこちらに興味を示すこともなく、お腹の上に頭を乗せ、ひたすらフルーツを食べ進めていく。
不意に、僕のお腹の虫が鳴いてしまった。彼女の口元は緩んでいた。
「お腹は、私たちと一緒で分かりやすいね。ほら、食べなよ」
まだ残っていたフルーツを一つ、彼女は僕に手渡してくれた。一口含めば、瑞々しい甘さが身体を満たしていく。だが、そんな僕を怪訝な表情で見る彼女。
「美味しいの?」
「美味しいよ。とっても」
「……やっぱり、分かりにくい」
彼女の一言に、僕は苦笑することしかできないのであった。
Fin
最初のコメントを投稿しよう!