第1章

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 見てはいけない。頭ではそう分かっていても、確かめずにはいられない。見てしまえば、怖ろしい物がいると確定してしまう。  だが見ずにいれば、それだけ己の中の恐怖が膨れ上がっていくのだ。 「賑やかで楽しくなると、思ったんですが」 「う……あぁぁぁぁ──!!」 「いやあぁぁぁぁ──!!」  窓ガラスには灰色をした人間が張り付き、表情のない顔で二人をのぞき込んでいた。しかも、一人や二人ではない。窓と言う窓に、ビッシリと張り付いているのだ。  まるで骨格を抜き取り、ブヨブヨとした肉の塊がギュウギュウと押し付けられているように。 「お帰りになるなんて、本当に残念です」  これは生きている人間ではない。生きているはずが、ない。  男は、息をする事も忘れて大声を挙げたまま、無我夢中でアクセルを踏み込んだ。  猛スピードで遠去かる男女を乗せた車に向かって、店員は深々と頭を下げた。 「またのご利用をお待ちしております」 ─ 了 ─
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