第二夜 金曜深夜のお客様

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 レジカウンターで会計をしている親子連れや、雑誌コーナーでマンガを立ち読みしている職人風の若い男、タバコを購入するためだろうか、ズボンのポケットをゴソゴソと探りながら入って来たサラリーマン。  いつも見ている光景と大して変わらないのに、モニター越しになると、途端に現実味を失うものなんだな。  妙な事に関心していると、作業を終えたらしい店長が声を掛けて来た。 「いや、お待たせしました。済まないね」 「いえ、お忙しいのにお手数かけます」  カバンの中から履歴書を取り出し、店長に手渡す。 「夜に入ってくれてたバイトさんが急に辞めちゃってねぇ。困ってたんだよ」  書類に目を通しながら、夜バイトの子って長続きしないんだよね、どうしてかなぁ等と店長は呟いている。 「夜間のバイトって、そんなに大変なんですか?」  そんなに人の出入りが激しいって、どんだけ仕事があんだよ? ちょっと不安になって、俺は店長に聞いてみた。 「基本的には、接客と商品の陳列だね。ただ昼間と違って一人だから、ちょっと大変かも知れないけど。それでも、他のコンビニに比べてキツイって事はないんじゃないかなぁ」  夜中に何度か利用した事があるけど、店長が今言った以上の仕事があるとも思えない。 「じゃあ、木下君。慣れるまでの二週間は、夕方五時から十時のシフトに入ってもらおうかな。覚えてもらわなくちゃ、いけない事もあるからね。で、様子を見て夜中のシフトに移ってもらうから」 「はい、分かりました。よろしくお願いします」  顔知っているのに、改めてこうやって名前を知るのも、何だか変な気分だねぇ。そう言って笑っている店長に頭を下げた。  シフト表は、翌日の昼までに作成しておくから、それ以降取りに来るように言われたので帰る事にする。  んな訳で、夕方五時から十時までの間、俺はコンビニでバイトするようになった。  これまでバイトなんてした事はなかったから、どうなることかと思ったけど、そこはそれ、俺ってば要領はいい人間だからね。  作業内容の引き継ぎとかレジの操作法とか、そんなモンに関しては全く心配していなかった。実際、一回説明を聞けば大まかなトコロは理解出来たしな。  俺は気にしていたのは、人付き合いの方だ。大概の事はそつなくこなす俺だか、どう言う訳か、円滑な人間関係を構築するのは苦手だった。
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