第五夜 家庭ゴミはご遠慮ください

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 雑誌や新聞紙、食べ物の容器や包み紙、油脂のシミや泥にまみれたゴミと一緒に。悪意を籠めて。  心なしか、胸の奥が軽くなったような気がする。お店で気に入った雑誌と新作スイーツを買い求め、夜道を再び自転車で走る。 「不要なモノは捨てましょう。集めて、丸めて、ゴミ箱へ。焼いて、燃やして、きれいサッパリ消し去って。気に入らないモノなんか、まとめて捨ててゴミまみれ」  歌うように節をつけて呟く。  佐山さんは知らない。私が、どれだけ深い闇を抱えているのか。  今はもう、プチアートを作ってはいない。今私が作るのは、自分の心をなぐさめるための、心に溜まり続けていく怒りや不満を吐き出すためのモノ。  先程のコンビニに捨ててきた袋の中には、紙ねんどで作った稚拙な人形。精巧である必要はない。肝心なのは「人の形をしている」事。  洗濯物のカゴに放り込んであった主人のシャツ。それに付着していた、私のものではない長い髪を集め、数本を仕分け用の小さなビニール袋に保管しておいた。  人形を作る時に、一本ずつ髪を紙年度の中に埋め込む。そうして、人形は私にとって「あの女」になる。  興信所を使って調べさせた。主人と付き合っているのは、主人と同じ部署で働く女だった。直接の部下ではないけれど、同じフロアに勤務している。  そう、私より若い女。私と違って、子供を授かる可能性のある女。主人が子供を欲しがっているのは知っていた。彼女が妊娠でもすれば、主人は大喜びで私を捨てるだろう。私がゴミ箱に捨てた、紙ねんどの人形のように。  正直に言って、自分の中に主人への愛情が残っているのか、この行動が愛ゆえのものなのか、分からない。  それでも私は、主人と相手の女を許す気にはなれない。  確かに私達夫婦の関係は冷え切ってしまっていた。だけど、その関係を修復するチャンスがなかった訳では、ない。あの女の存在さえなければ。  二人の写った写真を切り抜き、カッターでズタズタにした事もある。ボールペンのインク一本を使い切って、真っ黒に塗り潰した事も、余白の部分に呪いの言葉を書き込んだ事もある。  でも一番心がスッキリしたのは、人形を使った時だ。  あの女に見立てた人形を何体も作った。女の髪を埋め込んだ人形。丹念に、時間をかけて、壊してあげた。
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