第五夜 家庭ゴミはご遠慮ください

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 うちの近所にあるコンビニの、仲良くなった店員さんから聞いた話。  そこのお店はバイパス沿いにあって、大手ラーメンチェーンの店舗やファストフードの店舗と駐車場を共同で使用している。  深夜まで営業しているためか、利用客も多く、食事に来た人がついでにタバコや雑誌を購入していくので、売り上げも上々のようだ。  我が家から道路を挟んで斜向かいにあるそのコンビニは、私にとって非常にありがたい存在で、調味料が切れた時や料理をもう一品増やしたい時などに重宝している。  あまりにも近くにあるために、一日に三回も四回も行ってしまい、すっかり常連として店員さん達に顔を覚えられている。  ホットコーナーの一押し商品や新しいデザートメニューが入ると、感想を求められる事もあったりするし、見えにくいレイアウトについて意見をしたりもする。  そんなだから、店員さんが手空きの時に話を聞くようになった。 「ねえ、今日、これからヒマ?」  雑誌コーナーを物色していた私に、そっと近寄って来た店員さんが声をかけてくる。 「え? ああ、驚いた。佐山さんかぁ、びっくりするじゃない」  私は手にしていた雑誌を棚に戻すと、声をかけてきた顔馴染みの店員、佐山さんに笑いながら返事をした。 「あたしね、もうすぐ上がるんだけど、そこのお店でお茶でもどう?」  そう言って向かいにあるファストフードの店を指差す佐山さん。  何か目的の物があった訳でなし、時間潰しに雑誌を見に来ていた私は、佐山さんの申し出にすぐさまOKを出した。 「じゃあ、私、先に行って待ってるわね」  私は手頃な一冊を棚から抜き出すと、佐山さんに手を振ってレジへ向かった。  お昼時にはまだ時間のあるファストフード店はガランとしていて、ゆっくりできそう。 大声ではしゃぎ回る子供も、傍若無人な学生達もいない。  終日禁煙になってタバコが吸えないのは残念だけど、この静けさには代えがたい。  アイスミルクティーを求めると、窓際の席に座って買ったばかりの雑誌をめくる。  十分程待つと、仕事を終えた佐山さんがやって来た。 「ごめんね、待ったでしょ?」  ポテトとコーラの載ったトレイを手にした佐山さんが声をかけてくる。 「気にしないで。どうせ家にいたって、誰もいないんだし。こうやって佐山さんと話をしてた方が、私も楽しいわ」
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