第1章

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『植田さん、今月の学費まだ支払われてないんだけど』 いつもの感じでいつものようなホームルームの最後に、先生に私だけあとで職員室に来るように言われた。 「はぁ、そうですかぁ。家に帰って確認してみます」 なんでだろう。 この時はまだなんでだろうと、私には本当に見当がつかない思いだった。 その日は特別課外授業を選択していて、まだ帰れなかったので、一先ず母に電話してみた。 「もしもしお母さん、10月分の学費支払われてないって言われちゃったんだけど」 「あー!いっけない!ごめん今すぐ行くわあ」 そう言って電話を切ってから一時間後本当に母はすぐに学費を払いに学校に来てくれた。 課外授業が始まる前に会えたので、こちらから聞く間もなく、母はすごい勢いで 「お母さん忘れてたあ~うっかりしてたあ、ごめんねぇ」 そっか、たまたま忘れてたのかー。次からちゃんと気をつけてよね。 学費を払ってもらうのが当たり前に思ってる。その事にも気づかないあの頃の私。 私が母に何の疑いも持たない程、嘘には思えない笑い顔の夕方。それが私の借金道のはじまりだった。 借金女王
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