出会い?

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…どんな状況だ、コレ。 目の前の席には、ドリアを一生懸命冷ましている彼女。どうみても20歳越してるようには見えない。 かたや、しょうが焼き定食を完食し、アイスコーヒーをすする20代半ばの男。 あやしくね? まぁ、この業界では、珍しくない、はず。 目の前の彼女は、まくまくとドリアをほお張っている。 ハムスターみてぇ。 「すみません、遅くて…」 視線に気付いたのか彼女は、申し訳なさそうに、こちらに言う。 …その上目遣いは反則です… 「いーや、俺が早いだけですよ」 彼女を観察しすぎだ、俺。 ふぃっと、窓の外に目を向ける。 通りの向こう側、何故か居る蒔田と中嶋さん(先輩)。 二人はこちらを見てにやっていた。 …何でいんだよ…。 後で、何か言われんだろーな…。 さくっと目を反らし、アイスコーヒーを飲み込んだ。 「綾崎さん、は」 ようやくドリアとの格闘を終えた彼女が、アイスティーをストローでくるくるしながら声を掛けてくる。 「声優さん、だったのですね」 「そー。意外でしたか」 「はい、間違い電話の声が、怖か…」 はっと顔を上げ、目が合うと、赤くなって顔を伏せる。 ははっ、正直でよろしい。 あー、確かに。 相手蒔田だと思ってたから、トーン低かったかも? 「あー、相手蒔田…友人だと思ってたからさ、つい」 「す、すみません…」 そりゃな、知らん男から電話で、番号なんて聞かれたらおっかないよな。 「すまんね、俺の配慮が足んないんだわ」 「いえ!そんな事…」 必死に否定をしてくれる。 いい子なんだろうな。 「でも、今は、怖くない、デス」 そう顔を赤くしたまま言い、慌ててこくこくアイスティーを飲む彼女。 突然ものすごい破壊力の言葉を言われた俺は、 そりゃどーも、と言いつつアイスコーヒーをくいっと飲み、顔の温度を下げようとした。 …なんだこの、可愛い生物は。
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