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ゲーセンから戻り、そろそろ収録の準備をしなきゃなーと思いながら、廊下を歩く。
ふと、あるスタジオのまえにマネージャーがいた。
「桜井さん、収録すか?」
「おー、いや、今音の打ち合わせ中」
ちょっと心配でな、と笑ってマネージャーが指差す。
防音ガラスの向こうに、彼女がいた。
小さな身体、小さな手が、鍵盤一杯に動き回る。
真剣な眼差しが、楽譜を追う。
髪の毛を緩くまとめた首筋が、汗でキラリと光った。
『どきん』
また心臓が跳ねる。
昼に見たへにゃっとした顔からは想像出来ないくらいの、真剣さに。
楽譜を追う瞳に。
俺は目を奪われていた。
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