116人が本棚に入れています
本棚に追加
電話の相手は「あぁ」と頷?き
『そう、でしたか。すみません、違う番号、だと思います』
返事が返ってくる。
「あー…あの、重ねて申し訳ないんですが、この番号って…」
手帳にある番号と、公衆電話に表示されている番号を見比べる。
…あってるはずだよな?
『…えっと、×××の、〇〇〇〇の、5886
、なんですけど…』
電話の向こうの彼女は、親切に答えてくれる。
…5886?
これ、6じゃなくて、0かよ!
手帳に書かれている汚い字。
どうやら0を6と間違えてかけてしまったらしい。
「すみません!!こちらの間違いでした!」
重ねて謝る。
…俺は悪くねぇ。
電話の向こうの彼女は
『いえ、分かって、良かった、です』
ふっと笑ったように感じた。
今度こそ、警戒の色が取れた、柔らかな声。
その後、何度か謝り電話を切って、改めて目的の相手の番号を押しながら。
何故かあの、電話の向こうの声を思い出していた。
最初のコメントを投稿しよう!