出会い?

5/11
前へ
/371ページ
次へ
「あー、綾崎、コレ」 夏も始まり、7月の半ば、マネージャーから一枚の紙を渡される。 「なんすか?」 その紙に目を落としながら聞く。 「ソロCD」 「まじっすか」 この仕事、声優を始めてようやく様々なキャラクターの声をさせて貰いはじめ、少しずつ知名度も上がってきたと自負している。 前回録ったキャラクターの、キャラクターソングが出る事に決まったらしい。 単品でキャラソンを出すのは初めてだ。 思わずガッツポーズ。 「嬉しいのは分かったから、ちゃんと話を聞くー」 マネージャーが苦笑いしながら、紙を弾く。 へーい。 「…以上。何か聞きたい事ある?」 マネージャーからの一通りの説明をうけ、顔をあげる。 「いや、特に…」 「あ、そういえばさ」 思い出したようにマネージャーが言う。 「うちの姪っ子、ピアノ弾けるんだわ。今回のプレイヤー、頼んどいた」 「そうなんすか」 「近くの音大に通ってるんだけどさ、丁度いいから話振ってみた。どうせプレイヤー探さなきゃならんだろうし」 今回の曲はピアノ中心のバラードだ。 ピアノの収録があって、それに併せてボーカル録りがある。 背景の曲はプレイヤーさんを募集して使う事が殆ど。 「一応、そっちの方で顔合わせがあるから、そのつもりでいて」 「了解す」 女子大生かー、若ぇなぁ。 日々年齢を感じるお年頃。はぁ。 「じゃ、二・三日中には連絡するから」 「ふーい」 俺は、後で蒔田と祝杯だなとかそんな事を考えながら。 初めての単品でのCDに浮かれていた。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加