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「あー、綾崎、コレ」
夏も始まり、7月の半ば、マネージャーから一枚の紙を渡される。
「なんすか?」
その紙に目を落としながら聞く。
「ソロCD」
「まじっすか」
この仕事、声優を始めてようやく様々なキャラクターの声をさせて貰いはじめ、少しずつ知名度も上がってきたと自負している。
前回録ったキャラクターの、キャラクターソングが出る事に決まったらしい。
単品でキャラソンを出すのは初めてだ。
思わずガッツポーズ。
「嬉しいのは分かったから、ちゃんと話を聞くー」
マネージャーが苦笑いしながら、紙を弾く。
へーい。
「…以上。何か聞きたい事ある?」
マネージャーからの一通りの説明をうけ、顔をあげる。
「いや、特に…」
「あ、そういえばさ」
思い出したようにマネージャーが言う。
「うちの姪っ子、ピアノ弾けるんだわ。今回のプレイヤー、頼んどいた」
「そうなんすか」
「近くの音大に通ってるんだけどさ、丁度いいから話振ってみた。どうせプレイヤー探さなきゃならんだろうし」
今回の曲はピアノ中心のバラードだ。
ピアノの収録があって、それに併せてボーカル録りがある。
背景の曲はプレイヤーさんを募集して使う事が殆ど。
「一応、そっちの方で顔合わせがあるから、そのつもりでいて」
「了解す」
女子大生かー、若ぇなぁ。
日々年齢を感じるお年頃。はぁ。
「じゃ、二・三日中には連絡するから」
「ふーい」
俺は、後で蒔田と祝杯だなとかそんな事を考えながら。
初めての単品でのCDに浮かれていた。
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