出会い?

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…なんて事ない、女性とは言い難いほど幼い彼女に。 そんな感覚に、少し狼狽える。 …馬鹿げてる。 軽く頭を振る。 片付けをしていた彼女は、俺の様子に気付いたのか 「あの…大丈夫、ですか…?」 心配そうにこちらを見ていた。 「…あ、何でもないっすよ」 へらっと笑って返事する。 俺今日、この人に会ってから変だもんな。 そりゃ、心配もするさ。 その言葉に安心したのか 「良かった、です」 と、また笑った。 『分かって、良かった、です』 その言葉に、重なった。 「…あ」 間違ってかけた電話。 あの電話の向こうの声。 時々思い出していた、あの柔らかな甘い声。 もしかして、彼女? …似てるんだ、声が。 さっき引っ掛かったのは、これだったんだ。 「…あの、ですね」 思いきって聞いてみる事にする。 もやもやしているのは、気持ち悪い。 「春頃、夜に、間違い電話とか、無かったですか?」 俺の問いに、頭の上に『?』がついている彼女。 少しの思案の後 「…あ、ありました、です?」 変な敬語と疑問文で返ってきた。 突然変な事を聞かれて戸惑っているようだ。 やっぱり、彼女なのか? 「多分それ、俺です」 俺の言葉にきょとんとする彼女。 その後、考え顔。 「蒔田、俺綾崎だけど」 確か、そんな事を言った気がする。 思い出して口に出してみる。 その声を聞いて「あっ」と彼女が顔を上げる。 「…合ってます?」 聞いてみる。 彼女は 「あの時の、方だったん、ですね」 目を丸くしている。 そりゃそうだよな、こんな偶然滅多にない。 「その説はどうも、ご迷惑をお掛けしまして」 「いえいえ、あの、そんな、ご迷惑というほど、でも」 「いやでも、怪しかったですよね、俺」 「あ、はい…」 思わずそう返事してしまい、はっと口を押さえる彼女。 顔がどんどん赤くなっていく。 「いえ、あの、怪しかったとか、じゃなくって、えっと、…」 あわあわと訂正しようとする。 …慌ててる小動物…。 多分、今の彼女にピッタリの言葉。 その姿に思わず吹き出す。 「…くっくっ、いや、そんな否定しなくても、いいよ。自分でも怪しかったし」 「…すみません…」 「でも、お陰さまでちゃんと連絡は取れたから」 その言葉を聞いて、今までしゅんとしていた彼女が「良かった、です」とへにゃっと笑った。 …やっぱりその笑顔には、弱いかもしれない。
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