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「…別にそっくりって訳じゃないんだよな。あくまで雰囲気が似てるっつーか、世界観が同じっつーか。」
1週間前沢月がうちに残していった『不思議な鳴丘家』のイラストをぼーっと眺め、一人呟く。
その紙をリビングのテーブルに置き、黒いソファーに背を預けて目を閉じる。
女性恐怖症とコミュ障を患う完全なる社会不適合者、鳴丘麟太郎。
自分とまるで正反対の性格ではあるがれっきとした実の兄である。
職業は少女漫画家。
女性恐怖症の癖に矛盾しすぎだと思う。まぁ色々事情はあるみたいだけど。
そんな兄の描く漫画は世間で『泣ける少女漫画』として評価されており、どの作品も儚く美しい、切ない世界観を持っている。
儚い…美しい…切ない………。
……………………。
コミュ障で他人への当たりくそ強い癖に矛盾しす…いや、きりがないからとりあえずそれは置いといて。
俺が見た沢月の描いた絵は、二枚とも儚いどころか完全にギャグだった。
担任のおっさんがアイドルやってる絵と、俺が竹馬に乗って巨大な兄にカップ麺を与える絵。
なのに…なのに。
本当に不思議だ。
どうしても、兄貴の絵と被って見える。
この二人は同じ姿勢で絵と向き合っている。
…何故かそんな気持ちにさせられる。
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