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だからこそ、こいつならきっと優秀な兄の右腕になってくれるだろうと思って声をかけた。
うちは裕福だし、兄貴も相当稼いでるから、バイト代なんて沢月がアシスタントとして来てくれるならいくら払っても良かった。
それを思い付いた時なんて、思わず数学の教科書を握りつぶしそうなくらい興奮した。
名案だと思った。
…でも。
「はぁ…。」
この1週間で何度ついたか分からない溜め息。
つく度に幸せが逃げるというのが本当なら、俺にはもう吐き出す幸せなんて残っちゃいないだろう。
重い体を起こして2階の兄の仕事部屋へ向かう。
今はちょうど締め切りを終えたところで次の号のネームに取り掛かっているはずだが、どうせやってない。
ほっとくと担当の柳井さんが急かしに来るまでサボってばかりいるので、柳井さんがいない時は俺が何とかするしかないのだ。
くそめんどくせぇ…。
マジで弟やめたいんだが。
心の中でそう吐き捨て、2階へ続く階段を何段か上ったときだった。
ピンポーーーン
…客か?
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