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今日もいつもと変わらない、穏やかな学園生活を送る。
――はずだった。
誰もいない朝の教室で、今、目の前にいる同じクラスの御堂竜也に告白されなければ。
「好きなんだ、望月のことが。俺と付き合ってほしい」
聞こえなかったと思ったのか、もう一度告げられる想い。
いや、うん、ごめん。一回目でちゃんと聞こえてたよ。
だけど、ねぇ。なんで私なんだ。
派手でもない。だからといって地味というわけでもない。
いたって地味よりの普通な女子だ。
それがなんで派手で有名な御堂に、私は告白をされているんだろうか。
意味がわからない。罰ゲームかなにかなのか。
きょろきょろといるであろう人影を探す。
……うーん、誰も見あたらない。
ってことは本気か。本気で私を好きなの、かな。
「望月……?」
不安気な声色に、はっと我に返り御堂に視線を向ける。
「……」
「……」
「あの、気持ちは嬉しいんだけど……ごめんなさい」
頭を下げ、ただ床を見つめる。
「……」
御堂からの返事はない。
あれもしかしてこれは、私が立ち去るべきところですか。
いや、でも、えぇ。こういう場合は、どうしたらいいのだろうか。
誰か教えてくれ。辛い、辛いぞこの沈黙。
やっぱり私が立ち去るべきなのか。
心臓がばくばくと動き、呼吸がしづらい。
「望月」
「あ、はい」
勢いよく頭を上げ、御堂の顔を見る。
「……!!」
御堂は笑っていた。
え、なぜに笑顔。意味がわからない。
なにか企んでいるのか。それとも既になにか企んでいたのか。
御堂には気づかれないよう、心の中で警戒する。
じっと見ていると、笑顔が消えて真剣な顔になる御堂。
「恋人が無理なら……!!と、友達から始めてほしいんだ!!駄目なら、駄目なら……」
話している途中、突然膝から崩れ落ちた御堂。
「ちょっ、御堂!?どうしたの……!!」
彼は床にのの字を書き始めていた。
「……」
……あぁ、御堂は残念な美形だ。
私はそう心で呟き、御堂と目線をあわせるためにしゃがんだ。
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