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あれから半日が過ぎ、今は昼休憩。
兄手作りのお弁当を机に広げ、友人の伊織と旭の三人で食べ始める。
「いっただきまーす!」
「いただきます」
「あ、いただきます」
二人に遅れること数秒、私もいただきますと言って大好きなポテトサラダを一口。
もぐもぐ咀嚼を繰り返し、飲み込む。
「うん。今日も変わらず美味しい!さすが兄ちゃん」
「楓、私にも一口ちょうだい」
「ほい、あーん」
あーん、と口を開く伊織。
「……」
むぐむぐと伊織は咀嚼し、飲み込むとふにゃあとした笑みを浮かべる。
「さすが楓のお兄さん。とーっても美味しい」
そう笑みを浮かべ、語り出す伊織を見ながらふと思う。
そういえばあれから半日経ったけど、御堂と一度も話していない。
やっぱり冗談だったのか、な。
「ねぇ、楓」
今まで食べるのに集中していた旭が口を開いた。
なんか声が低い気がするけど……まぁ、気のせい気のせい。
「ん、なに?」
「さっきからずっと恋愛漫画みたいな、片想いしてるやつの熱い視線が楓に向けられてるんだけど心当たりは?」
「熱い視線?誰から……?」
「御堂から」
ご飯を一口サイズだけとって、口に含む旭。
私はどきどきしながら、顔だけ後ろに向ける。
瞬間、ばちりとあう視線。
「……」
爽やかな笑みを浮かべ、ひらひらと私に手をふる御堂。
一応、ふり返しておく。
「楓、御堂に告白された?」
「……!!」
大げさに身体が反応して、椅子から落ちるところだった。
あぁ、危なかった……。
「うわわっ!!楓、大丈夫?」
「あ、うん。なんとか」
「ふむ、なるほど」
落ちそうになった私を心配してくれる伊織と対照的に、聞いた張本人は心底鬱陶しいといった顔をしていた。
「旭さんや、その顔は友人に向けるものじゃないぞ」
「あぁ、ごめん。なんか甘い雰囲気が漂ってるから、ちょっと胸焼けしちゃって」
「うん、なんかごめん」
「うむ」
「旭ってば、本当に恋愛関係苦手だね」
「伊織のとこはセーフ」
「おぉ!セーフですか!!」
二人の会話を聞きつつ、御堂のことを考えるのだった。
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