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「俺は、今、県内の専門学校に通ってるんですけど」
「大学3年のとき、医学部を中退したんだよね。今は、音楽の専門学校の…2年生だった?」
「……はい」
竜二は素直に答えた。
殺人事件担当の刑事だ。既に、被害者家族の情報くらい得ていても不自然なことはない。
「16日は、学内のコンクールがあって、朝7時には家を出ました」
「他の皆さんは?」
「母さん……母は、大学教授なんですけど、って、知ってますよね」
問い掛けると、松ヶ崎は無言で首を縦に振った。
「なんか、けっこう大学でも人気があるらしくて、朝から講義だったみたいです。ほとんど俺と同じ時間に家を出ました。
ルイとレイは、知らないけど、たぶん普通に学校に行ったんだと思います」
「ルイ、というのは、麗依さんの双子のお姉さんの、七海 瑠依(ななみ るい)さんだね?」
今度は竜二が頷いた。
「ルイとレイは、高校も同じで、昔から仲が良くて、朝は毎日一緒に登校してました。
此処から学校まで1時間以上はかかるんで、あいつらも7時半には家を出たと思います」
竜二は、コーヒーカップを睨み付け、松ヶ崎の左腕にある腕時計を一瞥した。
時刻は9時45分をまわったところ。
今日は一人で学校に行った瑠依に、帰って来いと連絡したのが15分前。
瑠依の帰宅まで、まだ時間はある。竜二は、ぐっと奥歯を噛み締めた。
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