第一章

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「それで、その後は?」  松ヶ崎の視線が、竜二へと戻って来た。  竜二は記憶を探りながら、溜め息を吐く。 「その後って言っても、俺は次の日、17日か。17日の昼頃家に帰って来て、夜からアルバイトに行きました。  昼帰ったときも、ルイは部屋で勉強をしてましたね。  さっきお話した通り、レイと母はいませんでした」 「なるほど。じゃあ竜二くん、君が麗依さんに最後に会ったのは、16日の朝が最後ということだね」 「そうなります」  頷くと、松ヶ崎は瞳を伏せて、顔の前で握り合わせていた手をほどいた。  それから右手を細い顎にあて、何かを考えるように瞳を細める。 「……役に立てなくてすみません」  結局、その日中コンクールに没頭していた竜二は、16日の麗依について何も知らない。  たいした情報が得られず、どうしたものかと思っているのだろう、と感じた竜二は、思わず頭を下げた。 「いや」  すると松ヶ崎が視線を上げて、「そんなことはないよ」と否定する。 「こういうのは、些細なことが犯人を見付ける手かがりになるものだから。謝る必要はない。  ところで、外泊をする、と言っていた麗依さんのことだけど、土日を跨いで、ってことは、もともと帰りは今日の予定だったのかい?」  指先でするりと顎を撫でながら、松ヶ崎が言う。  竜二は首を横に振り、思いきり顔をしかめた。余り思い出したくない記憶を、呼び起こされたからだ。
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